2005年に米国の国立健康研究所、国立がん研究所、国立食品医薬品局の科学者たちは「高濃度のビタミンCはがん細胞に対して選択的に攻撃し、がん細胞を死滅させる」という共同論文をアメリカ科学アカデミー紀要誌に発表しました。これを契機に、米国の大学病院を中心に高濃度ビタミンC点滴療法ががんの補助療法として研究と普及が始まり、日本でも2007年から徐々にがん治療の選択肢として導入されるようになりました。
ビタミンCは自分が酸化されることで強力な抗酸化作用を発揮しますが、その際に大量の過酸化水素が発生します。血中に投与された時、正常な細胞は過酸化水素を中和できますが、がん細胞はこれを中和できず死んでしまうというのです。つまり、高濃度のビタミンCはガン細胞にとって《抗がん剤》でもあるわけです。この作用は、ウィルス感染症治療に対しても役立つと発表しています。
また、高濃度ビタミンC点滴が、がんの患者様の痛み、倦怠感、食欲低下、不眠などの症状を改善し、QOL(生活の質)を維持することが、多くの論文で発表され、単独あるいは他の治療との併用でがんの進行の停止や腫瘍の縮小例の報告もあります。何よりも高濃度ビタミンC点滴では化学療法のような辛い副作用が殆どないのが利点です。
現在、がん手術後の再発防止、がんの新たな補助療法として、米国・国立癌研究所(NCI)、米国・国立衛生研究所(NIH)において研究が進められている、がん治療法です。
血中濃度とがん細胞生存率の関係
ビタミンCの血中濃度が高いほどがん細胞の生存率が低くなる(がん細胞が死んでしまう)。
治療がおすすめな病状
米国では次のガンへの治療効果が報告されています。
- 乳がん
- 前立腺ガン
- 胃ガン
- 大腸ガン
- 直腸ガン
- 肺ガン
- 悪性リンパ腫
- すい臓ガン
- 子宮ガン
- 卵巣ガン
- 膀胱ガン
- 肝臓ガン
- 多発性骨髄腫
そのほかは
- 有効な治療法がないガン
- 現在抗ガン剤や放射線治療をしている
- 抗ガン剤や放射線治療の副作用を和らげたい
- 再発が心配な方、転移予防など
注意事項
G6PD欠損症という赤血球膜の遺伝子酵素異常がある方は治療を受けることができません。当クリニックは、30g以上のビタミンC点滴を行う前に必ずG6PDの検査を実施しています。また、腎不全で透析中の方はこの治療を受けることができません。心不全、大量の腹水、強い浮腫のある方は、点滴で水分を血管内に入れることで病状の悪化を来す恐れがあるため、この治療が出来ない場合があります。